野生動物と車両で衝突したら、保険対応はどうなるのっと

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 野生動物と車が衝突したら保険は使えるのか。
 そもそも野生動物は『所持者のいない物(所有権者の存在しない動産)』だから、保険の適用対象になりうるのか。
 自賠責、任意保険、車両保険、免責などの観点から、FP2級レベルの知識で解説してみます。

2級ファイナンシャル・プランニング技能士(CBT試験)に合格するまで
学科試験に合格するまで FP3級に合格した後、少し期間を開けて受験。 1回目と2回目は合格点数まで届かず不合格で、3回目でギリギリの点数で合格。 学科試験に合格した時点での、FP2級のテキスト類の勉強時間は約30時間。 プラスして、解説動画…


 キャンプや山登りなどの目的地へ向かう途中、山道や郊外を車で走っていると、突然鹿や猪などの野生動物が道路へ飛び出してくる事があり得ます。
 特に昨今の、市街地への熊の出没ニュースなどを鑑みるに、人間の子供よりも大きく、頑丈な動物と不意に衝突事故を起こしてしまう可能性は、元々の確率から見たら格段に高くなっていると言えるでしょう。
 もし避けきれず衝突してしまったら、
・車の修理費は誰が払うのか
・自賠責保険は使えるのか
・任意保険なら補償されるのか
・車両保険に入っていれば安心なのか
・火災保険などの特約や、個人賠償責任特約は使えるのか
・「免責」とは何なのか
 と、意外と分からないことが多いものです。

 今回は、こうした野生動物との衝突事故について、FP2級程度の保険知識をベースに、「誰の、何を補償する保険なのか」という視点から整理してみます。
 おそらく、自分の加入している車両や火災、地震保険の証書をじっくりと読んでいる方は少ないでしょうから、この機会に確認してみて、どのような事故、被害を受けた際に保険で補償してもらえるのか、チェックしてみる事をお勧めします。

まず知っておきたい「野生動物との衝突」の基本

 鹿や猪などの野生動物との衝突は、一般的には相手方から損害賠償を受けることが難しい事故です。
 例えば、

鹿が道路へ飛び出す

車と衝突する

バンパーやボンネットが破損する

 という事故の場合、鹿には通常、飼い主のような損害賠償責任を負う相手がいません。
 そのため、自分の車の修理費については、基本的に自分が加入している保険で対応することになります。
 ここで重要なのが、「自賠責保険」と「任意保険」の役割の違いです。

自賠責保険は「相手の人」を守る保険

 自賠責保険は、自動車事故によって他人を死傷させた場合の対人賠償を補償する強制保険です。
 したがって、
・自分の車の修理費
・鹿や猪など動物の損害
・自分の車に積んでいた荷物
 などは、基本的に自賠責保険では補償されません。
 つまり、
「鹿や熊などの動物、電柱などの物件にぶつかって車や積荷が壊れた」だけなら、自賠責から修理費は出ない
 と覚えておけばいいでしょう。

任意保険の「対人・対物」も自分の車には使えない

 任意保険の
 対人賠償責任保険は「他人のケガ」
 対物賠償責任保険は「他人の物」
 を補償するためのものです。
 したがって、
「鹿との衝突で自分の車が壊れた」
「電柱にぶつかって、車に積んであった機材が破損した」
 というケースでは、対人・対物賠償ではなく、車両保険が重要になります。

自分の車を守る「車両保険」と、ケガを補償する「人身傷害」

 野生動物との衝突事故では、自動車保険を「車」と「人」に分けて考えると非常に分かりやすくなります。
 車の損害 → 車両保険
 というように、車両保険は自分の自動車の損害を補償するための保険です。
 例えば、
・鹿と衝突してバンパーが破損
・猪と衝突してボンネットがへこんだ
・動物との衝突でヘッドライトが壊れた
 といったケースでは、契約している車両保険の補償範囲に入っていれば保険金を受け取れる可能性があります。
 現在の自動車保険では、一般条件だけでなく、限定タイプの車両保険でも動物との衝突を補償する商品があります。
 ただし、保険会社や商品によって補償範囲が異なるため、「車両保険に入っているから何でも大丈夫」と考えるのは禁物です。

「鹿に直接ぶつかった」と「鹿を避けて事故を起こした」は違う

 ここは特に注意したいところです。

・鹿に直接衝突(鹿に衝突 → バンパー破損)
 これは「動物との衝突」として補償される商品が多くあります。

・鹿を避けてガードレールに衝突
 鹿を発見 → 急ハンドル → ガードレールに衝突
 こちらは「単独事故」などとして扱われる可能性があります。
 そのため、限定タイプの車両保険では補償対象外となる場合があります。

 つまり、
「動物との衝突」と「動物を避けるために起こした事故」は、保険上同じとは限らない
 ということです。

自分や同乗者のケガ → 人身傷害など

 野生動物との衝突では、車だけでなく運転者や同乗者が負傷することもあります。
 例えば、
・鹿との衝突で運転者が負傷
・衝突の衝撃で同乗者がケガ
・鹿を避けようとして車が転倒
 といった場合です。
 このような「人の損害」は、車両保険ではなく、人身傷害保険などで考えることになります。
 ここでも、
 車両保険=車(の破損、故障)
 人身傷害=人(の怪我、死亡)
 と覚えると整理しやすくなります。

車両保険の「免責」とは何なのか

 保険の種類や契約によっては「免責」という言葉があります。
 保険における免責とは、簡単に言えば、

事故が起きても、その被害について一定額については契約者が自己負担する仕組み

 です。
 例えば、
「車両保険の免責金額:5万円」
 という契約だったとします。
 この契約で、鹿との衝突で修理費が30万円かかった場合、
 30万円-5万円=25万円
 となり、基本的には5万円を自己負担し、残りの25万円が保険金の対象となるイメージです。

修理費免責5万円受取保険金自己負担金額
3万円5万円0円3万円
5万円5万円0円5万円
10万円5万円5万円5万円
30万円5万円25万円5万円
100万円5万円95万円5万円

 このように「免責5万円」と書いてあっても「5万円を超えたら保険が使えない」という意味ではありません。
「契約した免責金額までは、保険金は支払われずに自己負担となる」という感じです。
 あくまで、契約上の自己負担額です。

免責を設定するメリット

 免責金額を大きくすると、一般的には保険料を抑えやすくなります。
 例えば、免責0円なら小さな事故でも保険を使いやすい一方、保険料は高くなりやすい。
 一方で、免責5万円・10万円など自己負担額を高額にすると、小さな損害は自分で負担する代わりに保険料を抑えやすくなります。
 つまり、

「小さな事故は自分で負担するから、大きな事故に備えて保険料を抑える」

 という考え方です。

免責には「自己負担額」以外の意味もある

 保険では「免責」という言葉が、
「そもそも保険金を支払わない条件」
という意味で使われることもあります。
 そのため、
・免責金額(自己負担となる限度額)
・免責事由(どのような理由であれば、免責が適用されるのか)
・補償対象外(そもそも、保険金支払いの対象になるのかどうか)
 は区別して考える必要があります。
 例えばFPの試験でも、保険は「何が補償されるか」だけでなく「何が補償されないのか」を見ることが重要です。
 問題でも、保険金支払いに関する計算問題がありますが、死亡事故の場合に支払われる保険金、支払われない保険金を区別して計算する問題があります。

火災保険・個人賠償責任特約と、事故後の対応

 さて、中には「火災保険にも入っているから、車の修理にも使えるのでは?」と考える人もいるでしょう。
 しかし、基本的にはそうではありません。
 火災保険の家財補償では、一般的に自動車は補償対象から外されています。
 その為、

鹿と衝突して車が壊れた
→ 火災保険の家財補償で修理する

 ということは基本的にできません。
 自動車は自動車保険で備えるのが基本です。

個人賠償責任特約も自動車事故には基本的に使えない

 火災保険などに付けられる「個人賠償責任特約」は、
・自転車で他人にケガをさせた
・日常生活中に他人の物を壊した
・飼い犬が他人にケガをさせた
 など、日常生活における賠償責任を補償するものです。
 例からも分かる通り、原則相手方の損害を保証するもので、自分自身の怪我や自己の所有物は補償適用外です。
 そして、自動車の所有・使用・管理に起因する賠償責任は一般的に個人賠償責任特約の対象外で、これらは自動車保険が対応しています。
 したがって、
 「火災保険に個人賠償を付けているから、自動車保険の対人・対物はいらない」
 という考え方はできません。

ただし「飼い犬」などの場合は話が変わる

 例えば、野生の鹿ではなく「飼い犬が道路へ飛び出してきて事故になった場合」が挙げられます。
 飼い主に法律上の損害賠償責任が認められれば、飼い主側の個人賠償責任保険が関係する可能性があります。
 つまり、
・野生動物 → 基本的に賠償してくれる相手がいない
・飼育動物 → 飼い主に責任が認められる可能性がある
 という違いです。
 また、道路の管理状況に明らかな問題があり、道路管理者に損害賠償責任が認められるような特殊なケースもあります。
 ただし、単に「鹿が道路へ出てきた」というだけで道路管理者の責任になるわけではありません。

野生動物との衝突事故を保険別に整理する

 最後に、FP2級レベルの知識として一枚にまとめてみましょう。

保険・特約自分の車自分のケガ他人のケガ他人の物
自賠責×原則××
対人賠償×××
対物賠償×××
車両保険×××
人身傷害×××
自損事故保険×○の場合あり××
火災保険・家財×××原則×
個人賠償責任特約××○※○※

 ※自動車事故を除く日常生活上の賠償責任など、契約条件による。

保険は「誰の何を守るのか」で覚える

 野生動物との衝突事故を理解するうえで、一番大切なのは保険の名前を丸暗記することではありません。
「誰の、何に対する損害なのか」
 を考えることです。
 覚え方としては、

自賠責・対人賠償=他人の「人」
対物賠償=他人の「物」
車両保険=自分の「車」
人身傷害=自分や同乗者の「人」
個人賠償=日常生活で他人に与えた損害

 と整理すると分かりやすくなります。
 鹿や猪との衝突では、相手から損害賠償を受けられないケースが多いため、自分の車を修理するためには車両保険が重要です。
 さらに車両保険には免責金額が設定されていることがあり、「免責5万円」なら、基本的には最初の5万円を自己負担します。
 そして。もう一つ忘れてはいけないのが、車両保険を使うことで翌年度以降の保険料が上がる可能性です。
 したがって、実際に事故が起きた場合は、

 修理費 → 免責額 → 保険金 → 等級・翌年以降の保険料

 まで含めて考えることが、保険を上手に使うポイントになります。
 結局のところ、野生動物との衝突に備えるなら、単に「自動車保険に入っている」だけでは不十分で、車両保険の補償範囲・免責金額・人身傷害の有無まで確認しておくことが重要です。

 とりあえず、今回は以上のようなところで。

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