最近、職場において個人の能力の高低差が気になりはじめました。
入社3年以内なのに自分から仕事を受け持ち、上司に対しても「この重要度の低い仕事は私の仕事なのだから、手を出さずに見ていてください。もっと難しい仕事と、困った時に助けるのがあんたの仕事」というような頼もしい人もいる。
方や入社十数年目なのに「この手順書、書類の内容が分からないので読んでません。教えてもらった方が早く終わるので、仕事の内容はまだよく分かってません」というような人もいます。
他にも千差万別で、年齢や職歴、本人の能力とやる気で様々な勤め人がいます。
私も名ばかり管理職として10人程度の部下に従ってもらっている状況ですが、個々人の能力にはもちろん差がありますし、本来はダメな行為なのですが仕事振りにランク付けしてしまう事もあります。
恐らく、全国の管理職、部下を多少なりとも統率する立場の方であれば同様の経験や悩みをお持ちかと思われます。
もしくは、時節の変わり目でもありますし、昇進や異動した先で同じような悩みを持つ方がいらっしゃるかもしれません。
その際に、この記事の内容が少しでも解決のヒントになればと思い、書き記しておきます。
2:6:2の法則、という偏りの法則
組織運営の現場、場面では常時発生する悩みと疑問が存在します。
つまり、
「優秀な人材に仕事が集中する」
「社員やバイトの全体的なレベルを上げる事は難しい」
「育成にコストをかけてもリターンが得られる保証はないし、少ない」
これらは、個人が集まって形成される組織には必ず発生する現象です。
この悩みと疑問をわずかでも解決する為に、今回は「2:6:2の法則」という物を理解する視点からアプローチしてみます。
俗に「働きアリの法則」という呼び名の方が有名かもしれません。
2:6:2の法則とはどういう意味なのか
まずは法則の原則になります。
組織とは、
・2割の優秀な上位層
高い成果、パフォーマンスを発揮して全体の利益を底上げする人材
・6割の中間層
平均的に業務を遂行でき、得意不得意があるものの一定の成果は出せる人材
・2割の下位層
業務の成果が伸び悩み、もしくは与えられたリソースに対してリターンが少ない人材
の3種類の人材で構成されます。
これらを総合して「2:6:2の法則」と呼称します。
下位層を取り除いても比率は変わらない
上位層、中間層、下位層の3種類の人材によって組織が構成されているのであれば、下位層2割を取り除けば有能な組織に変貌する、という訳ではありません。
これらの種類分けは、絶対評価ではなく、能力や適正、経験や思考方法を加味された相対評価なのです。
絶対評価とは、100点満点中70点以上が優秀で合格、というように明確な基準値が決まっている際の評価方法です。
入試や資格試験に多い方式で、一定以上の能力を持つ人材を発掘する方式ですね。
受験者の全員が基準点より上あれば、全員合格という分かりやすい評価方法です。
相対評価とは、全員の能力を加重平均した値と個人の能力値を比べて、中央値に対して上か下かを分類する評価方法です。
もしくは、誰か一人を平均的なモデルとして基準値とし、仕事ができるかできないかを分布していく方法です。
または、最も有能・無能な人間を選んで、そこを始点として能力の序列を形成する。
面接なんかでも、面談者の中で上から何人採用しよう、逆に下から何人足切りとして不採用としよう、という時に使われるかと思われます。
絶対評価の場合は、下位層を切り離せば自然と合格点を取った中間層以上だけが残ります。
しかし、それは資格試験といった「合格点を取る事」自体が目的の場合には有効に作用しますが、人が集まって形成される組織ではうまく機能しません。
何故なら、組織とは相対評価の集合体だからです。
会社や学校、自治体など、人が多数集まる組織である以上、必ず順位付けが発生します。
それも何かある度に、繰り返し、何度も。
仕事内容によって、階層の移動が起こる
例えば、以下の2つの例を想定してみます。
一つ目として、会社の中で営業成績の上位層を、役職関係なく10人集めた場合です。
この場合は自然と、売上や契約件数から一位から十位までのランク付けがなされます。
この場合は十位と九位が下位層、という事になります。
例え十位の物が部長職であっても、上位層の下位層、というポジションになります。
しかし、この2名を営業成績中間層に移動させれば、当然ではありますが中間層の一位と二位になります。
逆に上位者の枠を増やして中間層のトップ5名を上位層に組み入れた場合、十位と九位は上位層の中の中間層、という位置付けにランクが上昇します。
加えて、組み入れられた中間層の中に入社半年未満の新人がいた場合は、例え十五位であっても「たった半年でエース集団に食い込むくらいの有能」と評価されるでしょう。
また、技術部門の上位層5人を営業部門に異動させた場合、余程の適正がなければ中々上位層に登る事は難しいでしょうし、中間層で良い成績を残せるか不安もあるでしょう。
扱う商材によっては、下位層になるかもしれませんし、技術部門での経験が活かせる営業方法を会得すれば上位層に化けるかもしれません。
このように「2:6:2の法則」における階層分布とは、課長や部長といった身分制度であったり本人の努力が完全に無意味であったり、といった法則ではありません。
また、下位層だからといって全く仕事ができない、無能で会社のお荷物、という訳でもありません。
別の集団、つまり他の部門や会社、分野であれば上位層になれる人間がその集団では下位層に留まっている、という見方もあります。
この「2:6:2の法則」とは、人間の集合体が組織である以上、避けられない順位付けという傾向がある為に起こる経験法則に過ぎません。
育成コストの投資先
「2:6:2の法則」の概要は分かった。
それじゃあ、上位層、中間層、下位層のどの層に対して育成コストをかけるべきなのか?
それに対する答えとして、効率と合理性を最優先とするのであれば「中間層重視」です。
中間層を重視するポイント
中間層は全体の6割を占める、組織内の最大集団です。
しかも、得意不得意はあるものの、一定の成果自体は出す事のできる基礎力のある人材。
この層に育成コストをかけた場合、組織全体のレベルを引き上げ、育成効果を広く大きく波及させる事の可能性が大となります。
極端な図解になりますが、各階層にかけた育成コストに対するリターンの期待値はこうなります。

元々仕事の効率の良い上位層は、投資した育成コストに対して同等のリターンがあります。
基礎から応用まで満遍なくこなせるような人材であれば、わざわざ育成をしなくても能力を研鑽してレベルアップしてくれます。
一方で下位層に対しては、熱心に育成をしてコストを投資してもリターンを得られる可能性は低い。
下位層と評価されるという事は、言葉を選ばずに言えば現在の仕事に対して努力する、勉強するといった意識が薄い結果とも言えます。
であれば、同じだけの時間とお金をかけて、育成コストを投資するのであれば、集団母数が大きく相応のリターン効果が望め、成長期待値のある中間層にアプローチする戦略が肝要だと考えられます。
中間層重視のメリット
一つ目は、組織運営の安定化。
人材育成は戦略、業務遂行は戦術。
有名な言葉ですが、戦術のミスは戦略でカバー可能だが、戦略のミスは戦術でカバーし得ない。
戦略は戦術の上に建てられる物で、戦術の下に戦略を立て付ける物ではありません。
業務遂行でミスしても他にカバーできる人材がいれば安心して仕事ができますが、自分以外に担当業務ができない人材しかいなければミスできませんし、相当の責任とプレッシャーがかかる事でしょう。
中間層の育成による全体の底上げとは、この「カバーできる人材」の人数を増やす側面、予備戦力の確保という戦略的な余裕をもたらす効果があります。
上位層がいくら仕事ができるといっても、全体の人数としてみれば中間層が大多数。
中間層に育成コストをかけるという事は、大人数に業務改善効果や効率上昇効果が及ぼされ、結果的に上位層の負担も軽減されて主力層が分厚くなる可能性が期待できます。
また、中間層に一定同等の教育を行って育成すれば、中間層に所属する人間の得意不得意の能力差の縮小、改善効果も期待できます。
資料作成やメール対応が苦手であれば、専用のフォーマットを用意して統一する。
営業活動が苦手であれば、模擬商談で苦手意識を薄らげたりマナー講座を開催して基礎的な対応力を身に付けさせたりする。
そうして中間層の苦手を普通レベルまで引き上げられれば、母数が多いだけに育成効果も相乗して大きくなり、組織全体としての安定性が向上する可能性があります。
二つ目は、育成の再現性・安定性の高さ。
毎年新入社員が入社したり他会社から転職したり、部署間での異動などで組織の人員は変わっていきます。
新入社員や転職者の場合は「2:6:2の法則」に従い、上位2割と中間層6割の合計8割程度が中間層育成プログラムの恩恵を活かせます。
上位2割向けに、中間層育成プログラムを受けた上で、それを基礎としてより優秀な教育を受ける選択肢も用意してあれば尚ベター。
下位層2割も繰り返し育成、教育すれば必要最低限の事はできるようになるでしょうし、下位層自体のレベルが上がる事自体は組織として大歓迎すべき事象です。
下位層のレベルが上がれば、管理負担も軽減されて組織全体の管理コストも軽くなるからです。
また、異動して組織の人員が変更となった場合でも、一定の育成プログラムを受けていれば異動先での基礎的な教育課程を短縮可能です。
もし、育成プログラムの途中の異動であっても、それは育成プログラムを受けて「できる事」と「できない事」が客観的な指標で把握できるので、異動先で誰が何を教育するのかを明確にしやすい。
つまり「分からない事が分からない」という状況を減らせる可能性があるという事です。
分からない事が分かっていれば、分からない事用のプログラムをそのまま使えば良い状況となって教える方の負担も軽減できますから、総合的に育成期間の短縮となる訳です。
もちろん、営業、技術、経理といった分野ごとの垣根自体はあります。
しかし、それら異なる分野でも共通の育成項目はあるはずですし、異動先の部署が分かっていれば何を学ぶべきかあらかじめ検討を付ける事が可能です。
受け入れる方としても、
「営業から技術に来る人だから、この育成プログラムを採用して、このマニュアルも採用してみよう」
「初めて経理に来る人だから、基礎的な部分から教えてあげよう。もし不明点があれば、それを元にマニュアルを改善してみよう」
というような準備ができ、スムーズに人材育成から戦力化の流れを整える事が可能となります。
人材育成とは、教える方と教わる方、双方の負担を可能な限り軽減する事も必要な要素であるのです。
三つ目に、心理的な不公平感の軽減。
中間層は大多数の集団ですから、全員が同じような育成プログラムを受けていると周知しておけば、誰か特定の人物だけに期待をかけて育成している、というような不公平感、不満感を抱かれにくくなります。
前提条件として、上位層、下位層にも同じような育成プログラムを行わせるという事が必要ですが、これも不公平感を軽減する為の措置です。
中間層重視のデメリット
もちろん、デメリットも存在します。
まず、一つ目として突出した人材が生まれにくい。
全体的に同じレベルになるように育成するという事は、能力の標準化という成果を得られると共に無難な人材を増やしてしまう、という弱点があります。
なんでも卒なくこなせる器用貧乏な人材を量産してしまう恐れがある、という事です。
また、育成プログラムがちゃんと機能しているばかりに、自己研鑽や学習能力が低下してしまう恐れもあります。
「知らない仕事でもマニュアルがあるから、その通りにやっていれば良い」
「分からない仕事でも、分かる人がカバーしてくれるのだから最低限できればいいだろう」
というような考えを持つ人間は必ずいます。
そういった人間は中間層の下になり、下位層に移動してしまいます。
二つ目として、中間層にかけるリソースをそのまま上位層に集中させた場合に比べて、どうしても人材の能力値の爆発力には欠ける面がある事も事実。
1,000万円かけて中間層の育成をしたら2,000万円分のリターンがあるが、上位層に同じだけコストをかけたら8,000万円のリターンが得られる、というような状況の組織は少なくないでしょう。
これは「パレードの法則」といって「企業の利益の内8割は上位層2割が、それ以外の利益は上位層以外の8割が稼いでいる」という法則によるものです。
しかし、上位層は全体の2割である為、そして人間である為、育成コストをかけても上手くいく保証はありません。
だからといって成長の安定性が見込める中間層に投資した結果、上位層への待遇が相対的に悪くなり、優秀な人材の流出となってしまっては元も子もありません。
優秀な人材の流出を防ぐ。
その為の手段を構築する事も必要になります。
上位層を育成者として、評価項目に
中間層にコミットした結果、上位層の流出が起こる可能性がある。
その発生を少しでも軽減する為に、上位層に対して「仕事の成果を出す人材」の他、「強い中間層を増やす人材」も中間層や下位層からも有能な教育者であれば組み入れ、それらを含めて評価対象とする手法です。
一部の企業では人材育成の項目も評価対象として取り入れていると聞きますし、これは十分有効な手法であると感じます。
上位層が中間層を引き上げる仕組み作り
上位層が育成、教育を担当するという事は、上位層の思考や思想が直接中間層以下へ伝達されるという事です。
それにより、上位層のトップ人材のノウハウが言語化、文書化されて中間層以下へ広まり、それを元に育成が実施される。
一度育成行程が定まれば、修正しながら再現性と安定性の高い手法が徐々に確立していきます。
それらは上位層が行う実務に直結した指導が含まれていますから、下手な社外研修に比べて即効性や浸透性の高い物となる可能性が高く、中間層の成長速度が段階的に加速すると思われます。
つまり、優秀な上位層の考え方や仕事の進め方を、中間層という最大集団へ波及させる事ができる。
しかしながら、上位層に対して「育成プログラムがある程度完成したから、評価はそこで終わり」としてしまっては、人材流出のきっかけとなる恐れがあります。
上位層が育成、教育を担当するという事は、その分のコストを上位層に負担してもらっているという事ですから「育成プログラムを作成した事は、短期的ではなく中長期的な貢献」と捉えて、将来の戦力を育成、発掘した事を正当に評価しなければなりません。
特別手当や昇給の他、希望するポストに優先して配置させるという報酬。
育成した人材を優先的に部下として配属させる、逆に育成したい人材を部下として配属して全面的に信頼して任せる、といった組織からの信用と期待を示す。
物心両面からの評価、サポートが必須となるでしょう。
また、中間層が成長してくると、上位層1名で行っていた仕事を中間層2〜3名で担当できるようになる、という状況も発生するでしょう。
上位層の仕事を受け持った中間層はその仕事を通してレベルアップの機会を得られますし、中間層で育成された項目の中から更に得意な分野を見つけて、更に能力に磨きをかけるかもしれません。
そうなれば、浮いた上位層1名や特別優秀な分野を持つ中間層には、更に能力を発揮できる場所を用意できますし、上位層の上限が高くなるという事は相対的に中間層の上限も引き上げられるという事です。
これまで1〜100の幅で上位・中間・下位と区切っていた相対評価が、1〜150までの幅となったらどうでしょうか。
中間層の評価帯が広まった分、業務に対して強い層が厚くなり、組織の耐久性が上昇する結果を誘引可能です。
問題点として
以上の事は、無論ではありますが完全な机上の空論であり、実社会では上手くいかなかったり適用できなかったりする事もあるかと思われます。
その原因として、以下の要素があげられます。
一つ目に、実務能力と育成能力は別系統のツリーである。
いわゆる「優秀なプレイヤーは、優秀なマネージャーとは限らない」という事です。
優秀な人材ほど自分の勘や感覚、長年の経験から成果を上げている事が多く、その為どう指導したら良いのか分からない、苦手であるという面が往々にして存在します。
その為に言語化、文書化して育成プログラムとして機能させる、マニュアルとして成立させるという、実務とは別系統の能力が必要となるのです。
上位層という人材は元々重要な仕事を任されており、余計な業務を増やしてしまうと短期的には業務の効率や成果が下がってしまいます。
であれば、経営者や組織の長はその言語化、文書化を手助けし、素早く対処するという対策を施さねばなりません。
外部の教育機関に指導を頼る他、社内で教育分野の上位層を探して育成プログラムの作成を任せるといった具合に専門家や得意な人材を見つけ出し、実務の上位層と同等に扱わねばなりません。
何故ならば「2:6:2の法則」においては、「仕事内容によって、階層の移動が起こる」の項で説明したように上位・中間・下位層は流動的であり、相対評価であるが故に担当する業務によって人の階層は移動するからです。
育成の上位層に当たる人材とは程度の差こそあれ、実務はいまいちだけど人に物事を説明するのが上手い、文書を作成する業務が得意、なぜか新人教育や部下への指導が素直に受け入れられている、といった人材です。
繰り返しますが、実務能力と育成能力は別系統のツリーです。
つまり、実務能力だけを見ていては、育成能力がどのくらいあるのか見えにくいという事でもあります。
二つ目に、育成者の負担は増え、生産時間は減る。
人材を育成するという事は、その時間の間、育成者の生産性は下がるという事です。
それをカバーする為に、人材育成を評価項目として取り入れ、人材育成という業務自体が生産性のある仕事だと周知させなければなりません。
また、全体の業績が一時的に下がる可能性もあります。
先にも述べた上位層2割が起業の利益の8割を稼ぐという「パレードの法則」です。
仮に上位層10人の内、2名を育成プログラム作成や教育に集中させた場合、その期間の間企業の利益は最大で約15%程度落ち込む可能性があります。
もちろん、業務の片手間で育成に着手する事も可能ですが、その場合でも業務効率は下がり、利益率も比例して下がります。
だからといって育成担当者の評価を下げてしまってはその人材が流出しますし、それを見た他の上位層や中間層が組織を見限る原因になります。
なので、全体としての利益が減少したとしても、それは損失ではなく未来への投資という費用として考え、将来中間層が生み出し、上位層が押し上げる利益への先行投資として評価対象にしなければなりません。
三つ目に、育成プログラムを「やっている」という体裁だけ整える者の出現。
とりあえず育成プログラムを受ければいい、受けさせればいい。
そういう考えで教育ビデオや資料を流し見する者は必ず出現します。
特に、重要な仕事を任せている上位層ほど、中間層以下に対して育成コストをかけるよりも自分の仕事を優先した方が効率が良いと判断しておざなりになる可能性が高い。
また、お気に入りの部下にだけ手厚く教育して、他に者は実質的な放置をしてしまうかもしれない。
それを予防する為、もしくは牽制する為に、デメリットの二つ目と共通しますが、人材育成を生産性のある評価項目としなければなりません。
人材育成という手段ではなく、人材輩出の結果や部署全体の成果を評価する事に重きを置くのです。
四つ目に、中間層から依存体質者が現れる。
十分な育成プログラム、マニュアルがあるという事は、それを見れば仕事ができるようになる。
もしくは、どこに行っても分かる人がいるのだからわざわざ覚える必要はないし、分かる人に聞けば良い。
そう考え、業務に対するやる気の薄くなる者も必ず出てきます。
主に中間層の下位から下位層の者にその傾向が多いと思われます。
「中間層重視のデメリット」の項目内にある「突出した人材が生まれにくい」という状況です。
この状態に陥った者は、周囲の人間がどんどん仕事を覚えていく中で取り残され、相対的に「仕事のできない者」として軽く見られるようになります。
一度この傾向に陥った者を立て直すには、結構なコストをかけなければなりません。
やる気のない人間に懇々と仕事の目的や意義から教え直さなければならないのです。
個人的な経験上、一度依存体質になった人材はなかなか立ち直りません。
場合によっては、どんなに詳しくマニュアルを作っても「マニュアルを作った人間がいる=業務に詳しい人間がいる=その人に聞くかやってもらえば良い」という思考状態になってしまいます。
こうなってしまっては、周囲に業務の負担を肩代わりしてもらうばかりの下位層未満の人材となってしまいますから、依存体質になりそうな人材がいないか目を配って注意する必要があります。
以上の事から、制度の設計や育成プログラムの運用を誤れば、中間層育成計画は空転して成果の薄いまま動き続ける結果となる恐れがあります。
組織を安定させたいのか、変えていきたいのか
「2:6:2の法則」に基づき、中間層に育成コストを注いで人材の層を厚くする、という育成戦略は守りの戦略です。
組織を安定させたい場合は有効に機能する可能性が高くなりますが、何かしら組織改革したい場合には取らない方が良い手段です。
中間層育成計画が向いている組織とは、
・公共性が高く、もしくは長期的視点の経営から安定運用を第一とする組織
・ミス削減が重要項目となっている組織
・大人数を運用しなければならない現場
・技術部門や専門職など、特定の業務を繰り返し行う現場
・相対的な離職率を低下させたい組織
となります。
中長期的な運用、人材育成する目的と余裕、均一な仕事を提供する為の組織。
個人依存の強みではなく、組織やチームでの強度で戦うような組織です。
反対に採用すべきではない組織とは、
・研究、開発など個人の能力や才能に大きく依存する組織
・起業直後の人材の幅が薄い組織
・トップやエースに頼らざるを得ない組織
となります。
残念ながらこのような組織では、中間層を育成するノウハウや金銭的にも時間的にもコストを捻出する事が難しい、もしくは価値がないと判断されるでしょう。
研究内容によっては秘匿性が高く、個人の才能はマニュアル化できません。
起業直後で誰が何をするのかあやふやな状態では、自分の仕事で手一杯な為に育成プログラムを作成する余裕はありません。
トップエースに業績の大半を頼っている組織では、トップエースの時間と余裕を奪う事が組織の生命線を自ら断つ結果に繋がる可能性すらある。
以上の事を留意して、中間層育成計画とは、組織全体で行うのか部署単位の小規模で行うのか、誰に任せてどのくらいの権限を与えるのか、評価基準はどのように定めるのか。
経営者や管理者の対応力が求められる育成方法だと考えられます。
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